全身のバネの使って攻撃の衝撃を和らげたにもかかわらず、左腕が痺れて感覚が無くなった。
  百メートルほど吹き飛んだところで姿勢を正し着地。
  だが勢いは止まらず、そのまま更に数十メートル地を滑った。
「くッ!」
  運のいいことに利き腕である右手には感覚がある。
  目前には拳を構えたゼフキエルが既に迫っていた。
  その攻撃を何とか潜り抜けて間合いを取る。
「おい。
  攻撃してこねぇのか人間野郎」
  ゼフキエルは挑発するように笑みを浮かべながら手招きした。
「……」
  コイツの攻撃は重すぎて受け止めることは出来そうにない。
  だが、リムエルと戦った時よりは敵の攻撃が見えてきている。
  注意していればゼフキエルの攻撃が当たる可能性は低いはずだ。
  集中を開始する。
  ぎちりと全身に力が入ると同時に、身の回りで起こっているありとあらゆる情報が頭に入ってくる。
「こねぇんならこっちから行くぞ」
  その情報の中から奴の攻撃の種類、タイミング、速度を把握。
  奴が地面を蹴った。
  衝撃で地面が壊れた鍋のようにべこりと凹む。
「おぉぉぉおぉ!」
  間合いをつめるために巨大な鉄の柱のような腕を掻い潜って前へ特攻する。
  俺の上半身とほぼ同じ太さの拳が猛烈な勢いで傍を通り過ぎていく。
  距離を詰めた俺に対し、ゼフキエルは横薙ぎの掌を繰り出してきた。
  地面にへばりつくようにしてそれを避ける。